レントゲン上の初見で腰痛の発生を予測できない

1980年から2000年の多くの論文で腰痛の原因と思われていた部位(ヘルニアの大きさやヘルニアの有無など)のレントゲン・所見の不一致が報告されていました。

例えば坐骨神経の有無とヘルニアの大きさに関連性がないことやレントゲン上の初見で腰痛の発生を予測できないことが報告されました。

 

     Clin Orthop Relat Res. 1992 に掲載された論文

A群)港湾労働希望者208名、B群)急性腰痛の港湾労働者207名、C群)慢性(6ヶ月以上)腰痛患者200名のX線写真を比較した結果、

3つの群間の異常検出率に差がなくX線写真では将来の腰痛発症を予測できませんでした。

 雇用時のスクリーンテスト(撮影したX線撮影によって腰痛になりやすいか評価して採用の適否を選考する方法)としてX線撮影は不適切で経済性に問題があることが報告されています。

 

     N Engl J Med.2013

283名の外科手術と保存的治療を行っている坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニア患者をMRI検査による1年間の無作為化試験を行った。その結果、84%の患者が良好な結果を得たが、良好な結果の患者の35%はヘルニアが残存し、不良な結果の患者の33%にヘルニアが残存し有意差がなかった

(1年間のフォローの結果、MRI検査によるヘルニアの残存の有無が、

 1年間の坐骨神経痛の良好な改善に関係しない  

 可能性が示唆された)。

 

 

椎間板異常は腰痛の特有症状ではない?

1994の報告では20~80歳までの98名の無徴候(腰痛がない)の対象者と27名の腰痛のあるMRI上で異常のある対象者を無作為化してMRI検査した結果、 腰痛のない98名のうち36%は椎間板異常がなかったが、椎間板異常は腰痛のない対象者でも多く見られた

 

腰痛のない対象者では、少なくとも1ヵ所以上の椎間板膨隆が52%、椎間板突出が27%、椎間板脱出が1%確認された

 

(椎間板突出とは線維輪を破らない、椎間板脱出とは線維輪を破る)

 

腰痛がある対象者では、少なくとも1ヵ所以上の椎間板膨隆がの76%、椎間板突出が14.5%、椎間板脱出が26%確認された

 

MRI所見での椎間板脱出は腰痛がある対象者に多かったが

腰痛のない対象者でも椎間板膨隆や椎間板突出あるため

 

椎間板異常は腰痛の特有症状ではない可能性が示唆された

 

 

腰椎椎間板ヘルニア手術は坐骨神経痛に効果がないというエビデンス

 (1年間の経過で坐骨神経痛が良好になったことと 腰椎椎間板ヘルニアの残存は関係ないことが判明)

N Engl J Med.2013

283名の外科手術と保存的治療を行っている坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニア患者を
MRI検査による1年間の無作為化試験を行った結果

84%の患者が良好な結果を得たが、
良好な結果の患者の35%はヘルニアが残存し、
不良な結果の患者の33%にヘルニアが残存した。

有意差がなかったことより外科手術の有意性は認められなかった

(坐骨神経痛が良好になったことと腰椎椎間板ヘルニアの残存は関係ない
外科手術は効果が認められなかった)

 

 

慢性腰痛

J Pain Res. 2021
神経治療 2020


ほとんどの腰椎構造は、潜在的な痛みの原因として機能する可能性


これには、椎間板(IVD)、椎間関節、筋肉、腱、靭帯、筋膜、滑膜、関節包などの感覚神経支配が含まれます


腰痛は腰椎構造の炎症、変性、または損傷などの要因によって引き起こされる可能性があります。

また、炎症により腰椎構造に関係する感覚神経が過敏になり

 

脳や脊髄などの中枢神経系において感覚神経の信号の増大(中枢性感作)が生じる可能性があります

 

痛みが長引くとどうなる?

 

 スパズム(痛みをともなう筋の収縮)が習慣化すると、痛い筋肉を使わないように動いて本来なら使わない筋肉を使って動くように(代償運動)脳はプログラムを変えていきます(プログラムの変容)

 

例)腕を肩より高く挙げようとすると痛みが生じる場合は最初は無理をして動かそうとしますが痛いので脳が痛い筋肉を使わないで済むような動き(代償運動)に変えていきます。

本来なら腕を挙げるときに三角筋を使いますが、代償運動として背中の筋肉(脊柱起立筋、広背筋)が働いいて背中を反らしながら腕をあげ三角筋が働かなくてもよいプログラムに変わります(プログラムの変容)

プログラムが変わった状態が長引くと三角筋は細くなり(萎縮)力も発揮しにくくなります(プログラムの変容の固定化)

そうすると筋線維は弾力性がなくなり細くなって切れやすくなっていきます 

 

脳のプログラムの変容と固定化から逸脱して正常な軌道にのせるには脳のプログラムを変えることのできるアプローチが必要です。

 

 

立つ作業より歩く時間が長い作業が腰痛リスクを低下

ブログ画像Int Arch Occup Environ Health. 2022の論文

目的:本研究は、労働者の作業時の姿勢・動作(座位、立位、歩行、交互姿勢)と 腰痛 との関係を分析することを目的とした。

方法: これは、民間企業のデータベースからの成人労働者の 529 のレコードを含む合計 22 の過去 12 か月間および過去 7 日間の 腰痛 症状が研究の結果を分析

結果
立っている場合と比較して、優勢な歩行が過去 12 か月間に腰痛を報告する可能性を低下させたことを示しました 。ただし、仕事との関連はありません。 

最近の 腰痛 は、女性では過去 7 日間の他の身体領域の痛み、および以前の 腰痛 と関連していました。 

結論
立位姿勢は、歩行と比較して、過去 12 か月間に腰痛が生じる可能性が高くなります。
前年および過去 7 日間の 腰痛 は、個人的要因(性別)および臨床的要因と関連していました。

 

 

50歳以上の歩行量と腰痛の関連性

ブログ画像Spine J. 2019 の論文

概要 背景コンテキスト: 筋肉強化や有酸素運動などの身体活動は、腰痛 (腰痛) に効果的であることがわかっています。ただし、一般集団における毎週の歩行時間と 腰痛 との関連性はよくわかっていません。 
目的
歩行と 腰痛 の関連性を分析すること
韓国の成人の代表的なサンプルを使用して、50 歳以上の一般集団の歩行時間と 1 週間あたりの全体的な歩行日数に従って、この関連性を調べることでした。

研究デザイン
患者サンプル: 2010 年から 2015 年に実施された韓国国民健康栄養調査 。

分析
腰痛 と歩行活動に関する調査に回答した 50 歳以上の参加者に限定されました。

方法
2010 年から 2015 年にかけて、韓国の一般人口 (N=48,482) を対象に、国民健康および栄養に関する調査が実施されました。 腰痛 の状態と毎日の歩行活動(低強度活動)は質問により調査されました。

結果
週に 3 日以上、一度に 30 分以上歩くことと、週に 5 日以上、一度に 1 時間以上歩くことは 腰痛 と負の関連がありました。 . 
50 歳以上の一般人口において、週 3 日以上の長時間の定期的なウォーキングは、腰痛 のリスク低下と有意に関連しています。

 

 

仙腸関節と首痛・腰痛

歩いていて右足の踵が地面に着く時、仙腸関節内で

仙骨と腸骨は各々約5mm動いて踵がついた衝撃を和らげます。

この時、仙腸関節が歪みなどの原因で動かないと、衝撃が背骨に伝わり腰や首が痛くなる時があります。

首や腰が痛い時は筋肉や背骨の動きだけでなく、仙腸関節の動きをチェックすることが大事です。

 

腰痛と筋力低下

Hum Mov Sci. 2011 30(1)


腰痛が慢性的にあるひとと腰痛がない人と比べサイドブリッジの時間が短いことが分かっています。

 

中殿筋の筋力は慢性腰痛のある人とない人では差はないのですが、筋電図活動が大きくなり努力して立っていることが推測されています。

 

腰痛と神経制御システム

   脊椎の安定化システムは、背骨(脊椎)、筋肉、および神経制御システムで構成されています。

 

   関節に由来した(関節痛、関節老化等の原因による)筋への抑制は、脊椎の主要な分節安定筋である腰部多裂筋の脊椎の制御がうまくいかず、脊椎が不安定になり関節の過負荷が生じ、その結果として持続的かつ再発を繰り返す痛みが生じる可能性があります。

(註) 多裂筋 (脊柱起立筋群の深層にある長い筋肉で背骨の骨同士を安定させる)

 

 筋肉制御の乱れによる腰痛は、運動皮質の神経可塑性変化に関連しており、腰痛を取り除くことで元に戻すことができます

(註 運動戦略を元気な時のように戻すことができます)。

 

 

腰痛のテスト

J Can Chiropr Assoc. 2017 61(3)

 

股関節伸展(PHE)テストは、うつ伏せになり、交互に各脚をテーブルから持ち上げるテストです。

慢性腰痛時の大殿筋 (お尻の大きな筋肉で脚を真後ろにを動かす筋肉) に関連する運動制御障害の存在を評価する手段として説明されていました。

 

大殿筋、ハムストリングス (大腿部の後ろの筋肉で脚を真後ろに動かしたり膝を曲げる筋肉) 腰部の脊筋を観察および/または触診して、活性化の相対的な順序を決定します。

 

大殿筋が筋活動を開始し、その後ハムストリングスと傍脊柱筋が運動を開始するのが運動の「通常の」運動制御戦略です。

 

大殿筋の筋活動の開始の遅延は、慢性腰痛時の発症および/または悪化につながる可能性のある運動の制御障害の可能性のサインです。

 

 

痛み(腰痛など) による固有受容器からの情報の誤差

痛みにより固有受容器 (筋肉や関節のセンサー)からの情報が中枢 (脳・脊髄) に正確に伝えられなくなります。

 

また、筋の活動は痛みのため抑制され防御的適応による痛みのある周囲の筋力の発生や動きの制限、運動が遅くなるなど(Lund(1991)、筋の活動が抑制されます (Graven-Nielsen1997 ; Le Peraら ,2001)

 

痛い筋群が使えなくなるので、痛くない筋活動により運動の代償を行うように脳がプログラムされ運動戦略が変容していきます。

 

痛みによる中枢の抑制状態や運動プログラムの変容による代償動作による新たな痛み(左右差が大きくなる)が生じ痛みの連鎖が生じます。

 

この問題点を解決するためには正確な固有受容器からの中枢への情報と中枢(脳・脊髄)からの円滑で効率的な運動戦略の再構築が必要です。

 

 (註) 筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報は「固有感覚」として体がどのように動いたかをとらえる

 

 

固有受容器

身体の運動や位置についての情報を脳に伝達する受容器
パチニ小体(靱帯):加速度の検出、
ルフィーニ終末(関節包):運動方向と速さの検出
筋紡錘(他動的伸張による筋緊張の検出)
腱紡錘(他動的伸張および収縮による筋緊張の検出 ゴルジ腱器官)

 

筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報は「固有感覚」として体がどのように動いたかをとらえる

 

腰痛と固有受容器 1


精度が要求される課題では最適なパフォーマンスのために固有受容感覚のフィードバックが必要といわれています。
痛みが固有受容感覚のフィードバックに影響を与えパフォーマンスの低下に関与するという研究結果の一部を紹介します(Hum Mov Sci. 2013 Feb;32(1):228-239) 。

(註)筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報は「固有感覚」として体がどのように動いたかをとらえる

 

腰痛により固有受容器感覚のフィードバックが低下することが予測できますが、健常者と比較して検証した研究です。

(対象) 18人の腰痛患者と13人の健康な対照被験者における体幹運動の正確な制御を研究しています。

(指標) パフォーマンスの追跡課題によるtracking errors(追従エラー)を算出
モニターに出ている点線で表されているスパイラル軌跡を追跡すると各被験者の軌跡が実線で示されます。
各被験者は点線と実践の誤差を確認しながら正確な軌跡を描くようにフィードバックしながら追跡課題を遂行します。
点線と実践の誤差の合計面積が追従エラーです。

(振動刺激)追跡課題を遂行させながらバイブレーターにより体幹に振動刺激を与えます
(バイブレーターは固有受容器の混乱を誘発することが分かっているのでバイブレーターにより追跡エラーは増大することが予測される)

(結果) 腰部の筋肉の振動刺激がない状態では、追跡エラーは健康な対照と比較して腰痛患者で27.1%大きかった。
振動刺激により、健康な対照では追跡エラーが10.5%増加しましたが、腰痛患者では増加しませんでした。
 
振動刺激してもしなくても有意に健常者より悪い。健常者は振動刺激により固有受容器の精度が落ち固有受容感覚のフィードバック能力が低下して追跡エラーが10.5%増加したことが推測されます。

(註)筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報は「固有感覚」として体がどのように動いたかをとらえる

 

しかし、腰痛患者の場合は最初から固有受容器の欠損があるのでバイブレーター前でも精度が悪くバイブレーター前後で変化がないことが推測されます。

腰痛患者のパフォーマンスの低下が固有受容感覚の欠損によって説明される可能性があることを示唆しています。

 

 

腰痛と固有受容器 2

Spine J. 2015 15(8)

 慢性の腰痛がある人は固有受容性の体幹の姿勢制御と運動精度(関節や筋肉の受容器からの感覚入力により脊髄・脳が情報処理して姿勢を正確に制御する)に問題があると推測されています。

(註)筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報は「固有感覚」として体がどのように動いたかをとらえる

 

 しかし、急性から亜急性の腰痛をともなう時期に姿勢制御と運動精度の問題点がすでに出現しているか検証した研究は少ないので、検証された報告を今回紹介します。

 

(対象)

 体幹の運動協調性がないと臨床的に判断された急性から亜急性の腰痛の33人の患者と、性別、年齢、および肥満度指数と一致する33人の健康な対照者 

 

(測定法)

主観的な痛みや恐れ、日常生活の能力の質問のテストと客観的な椅子座位での体幹制御能力(3次元的に座面が動く時の動揺面積)と運動の精度のテスト(座位で8方向に正確に重心移動できたかの精度)を指標

(結果)

 閉眼状態(視覚での姿勢制御がないため固有受容性の情報が主となる)の腰痛患者の姿勢制御は、健常者と比較して統計学的に有意に損なわれていました (座面が動いた時に動揺した面積が健常者より大きかった)。

運動精度も健常者と比較して統計学的に有意に損なわれていました。

また、これらの体幹運動制御の能力は患者の主観による痛みと運動の恐怖のスコアとは有意な関連性はありませんでした。

(結語)

 体幹の運動協調性がないと臨床的に判断された患者は、腰痛出現の初期に体幹運動制御の低下を示し、固有受容感覚、運動出力、または中枢処理の障害が発生することが示唆されました。

また、体幹の運動制御の困難性は自覚症状が伴わないことがあることも示唆されました。

 

 

慢性腰痛による運動戦略の変容

Eur Spine J (2008) 17

慢性再発性腰痛のあるの固有受容性の姿勢制御戦略の変化

 

慢性再発性腰痛のある人は体幹の補強戦略を適用し、足首の固有受容性の制御に依存した立ち方が特徴的であると推測されている

(註)筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報は「固有感覚」として体がどのように動いたかをとらえる

 

(研究の目的)慢性再発性腰痛のある人特有の固有受容性の姿勢制御の変化があるかを明確にすること 慢性再発性腰痛のある人と健常者24人が次のような条件で60秒間、安定した土台とウレタン様の柔らかい不安定な台の上に立ち各々重心動揺を測定

 

刺激条件 開眼安静立位(振動なし)

閉眼立位での下腿三頭筋(アキレス腱として踵の骨に付着する、踵を上げ床を蹴る筋肉)の振動

閉眼立位での腰部背筋の振動

閉眼立位での前脛骨筋(脛の前外側の筋で足部を上げる筋肉)の振動

 

重心動揺測定開始から15秒安静立位をとり(1相)、その後 15秒間筋肉への振動(60 Hz0.5 mm)を持続したまま立位を保持(2相)

前方変位は正値、後方変位はマイナス値とした

立位での重心位置の前方と後方変位を計算し、下腿三頭筋が主に働いている調節している時は1の値に近づき、腰部背筋が主に働いている時は0の値に近づくような式で値を求めて指標とした(relative proprioceptive weighting (相対的固有受容性加重比率)

下記の計算式によって,下腿三頭筋と腰背筋のどちらを優 位にして姿勢制御を行っているかを判断

 

RW TS/LM=abs TS/ abs TS +abs LM)

 

abs TS, abs LMは,それぞれ下腿三頭筋振動刺激, 腰部背筋振動刺激時の重心動揺変位平均の絶対値です。

 

(註) 閉眼では視覚からの情報がないので固有受容器の情報で立位のバランスを保ちます。また、筋肉に振動刺激を与えると固有受容器からの情報の精度が落ち立位のバランスを制御するのが困難になり重心動揺が増大します。

 

(結果)  慢性再発性腰痛のある人は、有意に異なる姿勢制御戦略を示した。 慢性再発性腰痛のある人は、腰部背筋の固有受容感覚制御の代わりに、足首の筋肉の固有受容感覚制御(1に近い比率)を用いた。

 

 安静立位で振動刺激がない1相では固い台の上で立っても柔らかい台の上に立っても有意差はなかった。

しかし、振動刺激がない1相で柔らかい台の上で立った時は、慢性再発性腰痛のある人は閉眼時と腕を前後に振った時、健常者と比較して有意に動揺の増大が認められた(バランスが悪くなった)。

 

 固い台の上での下腿三頭筋の振動刺激では、慢性再発性腰痛のある人は健常者と比較し後方に大きく揺れた。

しかし、固い台の上での閉眼立位での前脛骨筋の振動では有意差は認められなかった。

対照的に、腰部背筋の振動刺激では、健常者は慢性再発性腰痛のある人と比較して有意に前方の揺れが大きくなった。

相対的固有受容性加重比率RWは、慢性再発性腰痛のある人が平均± 標準偏差が0.83 ± 0.06 、健常者が 0.67 ± 0.13で、慢性再発性腰痛のある人が有意に大きく、下腿三頭筋からの固有受容性戦略を優 位にして姿勢制御を行っていた。

 

柔らかい台の上での下腿三頭筋の振動刺激では、固有受容性加重比率RWは、慢性再発性腰痛のある人が0.8 7± 0.07 、健常者が 0.46 ± 0.14で、有意に大きく下腿三頭筋からの固有受容性戦略を優 位にして姿勢制御を行っていた(比率1に近い)。

 

(註)慢性再発性腰痛の人は固有受容感覚の姿勢制御戦略で足首の戦略が最も適切でない不安定な支持面に立っている時も体幹での姿勢制御が困難で下腿三頭筋からの固有受容性のフィードバックにより立位を保持しようとしていることが推測されました。

慢性再発性腰痛による姿勢制御の戦略の変容(下腿三頭筋優位)は痛みにより腰部背筋の固有受容器情報を使えないことの代償として解釈できます。

 

腰部の痛みの減弱と同時に、腰部の脊柱周囲の筋群を固有受容性の刺激をして

腰痛により戦略の変容が生じた腰部背筋群の再学習を行い運動戦略を正常化して安定した体幹な制御を行うコンディショニング(脳科学コンディショニング法)が必要です。

 

 

腰痛はメンタルか? No.1

 1980年から2000年の多くの論文で腰痛の原因と思われていた部位(ヘルニアの大きさやヘルニアの有無など)のレントゲン・所見の不一致が報告されていました。

例えば坐骨神経の有無とヘルニアの大きさに関連性がないことやレントゲン上の所見で腰痛の発生を予測できないことが報告されました。
今回は、レントゲンでは腰痛の増悪の予測ができないという有名な論文を紹介します。

腰痛が出現しやすい港湾労働で新規採用時に腰痛にならない人を採用したいためX線写真で異常検出を試みた研究です。レントゲンでは腰痛がひどくなるかどうかの予後は分からないということでした。レントゲンに異常があるからといって、腰痛が出現するとは限らないし、レントゲンに異常がなくても腰痛が出現するということです。したがって、採用前にレントゲン検査しても経費の無駄になるということが判明しました。

(Clin Orthop Relat Res. 1992
港湾労働希望者208名、急性腰痛の港湾労働者207名、慢性(6ヶ月以上)腰痛患者200名のX線写真を比較した結果、群間の異常検出率に差がなかったことから、将来の腰痛発症を予測できず、雇用時のスクリーンテストとしてX線撮影は不適切で経済性に問題がある)

 

 

 

腰痛を伴う坐骨神経痛患者に関する論文の紹介

腰痛を伴う坐骨神経痛患者を対象としたMRI上の予後予測と腰痛の関連性

 

人の神経放射線科医と1人の脳神経外科医がすべてのMR画像を個別に評価した

MRIリーダーは、症状の状態を知らされていなかった.

 

坐骨神経痛患者379人のうち、158人(42%)が重症な腰痛を伴った

坐骨神経痛と腰痛の両方の痛みを伴う患者の68%は、主に坐骨神経痛のみの患者の88%と比較して、MRIで神経根圧迫を伴う椎間板ヘルニアが明らかであった (P <0.001)

 

ベースラインでの坐骨神経痛で重症な腰痛を伴う場合の症例は、1年で回復の自覚症状と負の関連があった

 

重症な腰痛を伴う坐骨神経痛患者は、主に坐骨神経痛を患っている患者と比較して、

1年間のフォローアップで好ましくない結果を示した

 

MRIで神経根圧迫がない状態の重症腰痛を伴う坐骨神経痛患者は MRIで主に坐骨神経痛と神経根圧迫を伴っている患者と比較して腰痛の程度が強かった.

 

 

 

慢性腰痛の原因は?

J Pain Res. 2021; 14: 1483–1494.

神経治療 2020; 37: 166

 

ほとんどの腰椎構造は、潜在的な痛みの原因として機能する可能性があります

 

これには、椎間板(IVD)、椎間関節、筋肉、腱、靭帯、筋膜、滑膜、関節包などの感覚神経支配が含まれます

 

腰痛は腰椎構造の炎症、変性、または損傷などの要因によって引き起こされる可能性があります

 

また、炎症により腰椎構造に関係する感覚神経が過敏になり
脳や脊髄などの中枢神経系において感覚神経の信号の増大(中枢性感作)が生じる可能性があります

 

肥満のオフィスワーカーと腰の不快感

Occup Environ Med. 2014 の論文ブログ画像
 断続的な立ち仕事で職場の座っている時間を分割すると、太りすぎ/肥満のオフィスワーカーの疲労と筋骨格の不快感が改善

目的: 高さ調節可能なワークステーションを使用して、就業時間中に断続的な立ち仕事を導入することで、疲労、筋骨格系の不快感、および座って仕事をする場合と比べて仕事の生産性を主観的に改善できるかどうかを調べる
対象と方法
太りすぎ/肥満のオフィス ワーカー (n = 23; 年齢 48.2±7.9 歳、体格指数 29.6±4 kg/m(2)) は、2 つの 5 日間の実験条件を均等にランダム化された (1:1) 順序で実施
シミュレートされたオフィス環境で、参加者は通常の職業上のタスクを 1 日 8 時間、次のように実行しました
または、電動の高さ調節可能なワークステーションを使用して、30 分ごとに立位と座位の作業姿勢を入れ替えます (STAND-SIT 状態)
各実験条件の 5 日目に、疲労、筋骨格系の不快感、作業生産性を測定する自記式アンケートを実施した

結論: 座って仕事をする場合と比較して、1 日を通して 30 分ごとに座って仕事をする姿勢から立って仕事をする姿勢に移行すると、仕事の生産性を維持しながら、過体重/肥満のオフィス ワーカーの疲労レベルと腰の不快感が大幅に減少しました。